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Talk with 高野浩幸対談集
第1回 スーツアクター 前田 浩さん
(2001年 新宿にて)

Guest Hiroshi Maeda
ProfileアクションスクールO.S Factory代表
       スーツアクター、スタントマン

『仮面ライダーTHE FIRST』仮面ライダー1号
『特捜ロボ ジャンパーソン』ガンギブソン
『ジャーマン探偵団 魔燐組』ジゴマ
『特急指令 ソルブレイン』ナイトファイヤー
『鳥人戦隊 ジェットマン』レッドホーク
『恐竜戦隊 ジュウレンジャー』ティラノレンジャー
『USA パワーレンジャー』歴代レッドレンジャー
戦隊シリーズのレッド役を新堀氏から受け継ぎ、
華麗にして力強いアクションとスタントが魅力。
スーツアクターのトップスターの一人。
マスクを外した素顔もとびきりの二枚目だ。
ロスアンジェルス、ニュージーランドなど海外での
活動を経て2003年に帰国。
2004年、アクションスクール「O.S Factory」を開講。
高野:「久しぶりの帰国ですか?」
前田:「いえ、ビザの更新などで年に何回か日本に戻っていますよ。
    今回は対談集の第1回ゲストとしてお招きいただけて、とても光栄です」
高野:「僕も超人バロム1や仮面ライダー、ウルトラマンシリーズなどの特撮番組には数多く出演してきま
    したから、前田さん達スーツアクターのみなさんに親近感を感じるんです」
前田:「高野さんはメインキャストとして、直接の表情やセリフで喜怒哀楽を表現できますけど、僕らスーツア
    クターは衣裳や面の内側からほとばしる、と言いますか、滲み出るような演技が要求されます。
    ヒーローはヒーローらしく、悪者は悪者らしく、しかもクサくない演技(笑)」
高野:「なるほど。衣裳や面を通じての演技は難しいですね。表情という直接表現がないわけか……。
    高度な演劇的技量が要求されますね」
前田:「いや〜、演劇的技量というほど大げさなものではありません。ただ、演じる上で意識をそこに持って
    いくというか、やはり役者としての演技を心掛けていますよ。
    テレビ視聴者の皆さんには意外かもしれませんが、面の中でちゃんとセリフをしゃべるんです。
    後で俳優さんの声がかぶせられるんですが、キチンとした演技になるようにセリフも覚えます」
高野:「僕もこの夏、箱根の仮面ライダーアギトショーや、行川アイランドのタイムレンジャーショーなどに出
    演して、改めてスーツアクターのみなさんの凄さを感じたんですよ」
前田:「僕も後楽園遊園地の電撃戦隊チェンジマンショーなどに出演していました。
    子供番組に限らず、アクションやスタントで観客、視聴者のみなさんに驚きと感動を提供できるのは、
    僕らしかいない。エンターテイメントを支える者としてのプライドはありますね」
高野:「演技力+アクションやアクロバティックな動きという特技が要求されるだけに、普通の役者ではでき
    ない特別な存在ですもんね。その矜持たるや、想像に難くないです」
前田:「僕の師匠や大先輩のみなさんは『自分は役者である。そしてマスクを付けた演技も出来る』という、
    役者魂、プライドを持っていましたね。もちろん、僕もそうです」
高野:「スタントマン、アクション俳優の前に役者であるということですね」
前田:「そうです。仮面ライダー、超人バロム1、変身忍者嵐など、東映変身ヒーローの全盛期を築いた先輩
    の作品を観ると、圧倒的な存在感と凄まじいまでの迫力があります。
    ズイッ! と一歩前に出るだけで、数十人の戦闘
    員達がビクンッ! と一斉に後じさりする。
    劇中において、スーパーヒーローは戦闘員ごとき
    相手ではないんです(笑)」
高野:「確かに何人いようとアントマンはバロム1に一
    蹴されてしまいますね」
前田:「スーパーヒーローの無敵の強さ、その源の正義
    に燃える熱い魂が伝わったと思いますよ」
高野:「うんうん。それは感じますね。本当に強く、正義
    感に燃えるヒーローを感じます」

高野:「高所でのアクションとかは怖くないですか? 僕
    はバロム1の劇中で、マンション2階から飛んだ
    経験があるんですよ。タケシと一緒に窓から飛び
    降りながら『バッロ〜ムクロ〜ス!』(笑)」
前田:「当時小学生ですよね !? それはすごいなぁ。吹
    き替え無しだったんですか?」
高野:「ええ。下でスタッフの皆さんが、僕らよりも緊張
    した面持ちでマットを支えていて。
    いざ飛んでみると、やはり怖くて顔が引きつって
    いましたよ。ケンタロウもタケシも(笑)」

前田:「僕はコワイというより、ツライと感じたのが後楽

     園の野外劇場ショーです」
高野:「撮影のスタントやアクションよりもつらかったんですか?」
前田:「ショーが開演したら、終演までフルスロットルですから。出る場所もステージの最上段に駆け上がり、
    飛び降りたら、今度は中段で立ち回り、次は下手(しもて)、その次は上手(かみて)と……」
高野:「文字通り、息つく暇もないって状態ですね」
前田:「そうです。面を着けていますから、呼吸もままならない状態で全力疾走&アクションの連続です。
    国内最高のアクションショーという自負がありますから、キャスト全員、ツライとは口にしません。
    ところが正直に言うと、僕はつらかった(苦笑)」
高野:「この夏、行川アイランドのタイムレンジャーショーで悪ボス役を演じたK氏はインカム付けてセリフを
    シャベリながら立ち回りをこなし、ショーが終わるとゼェゼェ言ってましたけど、ショーの最中は息も乱
    さず、とうとうとセリフを話していましたね。
    彼も同じ年の'61年生まれ。これには驚きましたよ」
前田:「K氏? ○○○(事務所名)のKさんですか? 細身で僕くらいの身長の」
高野:「そうです、そうです。あれ? 前田さんもK氏をご存知なんですか?」
前田:「いや〜、同い年なんですが、業界では少し先輩で、後楽園チェンジマンショーのジェットコースターに
    立ったまま乗って登場してくる、通称コースターレッドをやっていた方ですよ。懐かしいなぁ。
    一緒にバイクツーリングに行ったこともあります。Kさん、現役で続けていらしたんですね」
高野:「前田さんもご存知でしたか。この世界って意外に狭いですね。いや、K氏の顔が広いのかな?
    (笑)。ともあれ、運動能力の高さ、酸欠状態でも演技を続けられる強靱さ、危険なアクションに挑む
    勇気、そして臨機応変の演技対応と、やはり“選ばれし者達”だけが続けられる世界ですね」
前田:「そんなに持ち上げられてしまうと、少し恥ずかしいですね(笑)
    肉体的な強靱さやアクションの技量は、個人差はあっても日頃の鍛錬、練習量に比例して向上しま
    す。でも、体力や技術だけで続けられる世界ではない。根性や精神力という言葉でくくれるものでも
    ない。これはスーツアクターや役者に限ったことで
    はありませんが、その仕事が好きで誇りに思える
    か、だと思うんですよ。好きで誇りに思っているか
    ら、つらくて苦しいんですが、嫌ではないんです」
高野:「つらくて苦しくても嫌ではない……。なるほど。
    辛抱や我慢とは違いますね」
前田:「他人からは過酷に見え、やっている本人も青息
    吐息なのに、それを楽しんでいたりするんですよ
    (笑)」

高野:「現在のお話を伺わせてください。アメリカと日本
    の撮影手法には違いがありますか?」
前田:「アメリカでは俳優の芝居の部分をファーストユニット、アクション部分をセカンドユニットと分け、4話
    撮りとか、非常に合理的に撮影が進められます。カメラマンも2名といった具合に、スタッフも日本の
    倍で撮ります。当然予算もそれなりにかけて」
高野:「えぇ!? それはすごいですね。すると1年分の収録期間は……」
前田:「8カ月くらいですよ」
高野:「さすが合理主義の国。日本でも深夜枠でパワーレンジャーが放映されたことがありますね」
前田:「邦題ジュウレンジャーの分ですね。当時はまだ、日本の特撮キャラクター番組がアメリカで成功する
    かどうか模索状態でしたから、アクションシーンになると、いきなり東京の水道橋になったり、お昼の
    シーンのはずが、突然夕暮れ時になったりと、チグハグな部分がありました……(汗)」
高野:「そ、それは……(苦笑)」
前田:「それでもアメリカの子供達に大ヒットしたんです。そこで予算も充分にとって、日本のアクション、日本
    のスーツアクターを起用して、特撮ヒーロー番組として確立させたんです。
    『パワーレンジャー・タイムフォース』は本家『タイムレンジャー』に負けない出来ですよ」
高野:「え? するとアクションパートを担当している、スーツアクターは全員日本人キャスト?」
前田:「そうです。メインキャラクターは全員が日本人キ
    ャストです。僕たち日本人がアメリカの子供達の
    夢を作っているんです。まさに燃える! って感じ
    の充実感がありますよ」
高野:「メイドインジャパンのキッズドリームはアニメだ
    けじゃないんですね」
前田:「一時、ポケモンに一位の座を奪われましたけど
    ね(笑)。今は人気NO.1に返り咲いています。
    タイムフォース、日本でも深夜枠でいいから放映
    して欲しいですよ」
高野:「スーツアクターやスタントマンのステイタスは、
    アメリカでは確立されているんですよね」
前田:「はい。あまり良い例ではないんですが、ロケ現
    場に近所の子供達が見に来ていて、たまたま僕
    らが面を外したり、スーツを脱いでいるところを見
    られてしまうこともあるんですよ」
高野:「それはまずいですね」
前田:「普通なら子供達の反応は『あ、中身が別人だ。
    パワーレンジャーはウソだ!』となるじゃないです
    か。
    ところが向こうは違うんです。『Oh! さすがにパ
    ワーレンジャーをやってる人はすごい身体だ
    ぁ!』って。
    ほとんどの子供がスーツアクターの鍛え上げら
    れた肉体、精悍な顔付きにまで、賞賛を贈る。
    だからといって姿をさらしても良いって事ではな
    いんですけどね。日本とは違うんですよ」
高野:「う〜ん。国民性の違いですね。大らかで、素晴ら

    しいと感じたことに素直なんですね」
高野:「そうだ。今、演じてみたいヒーローキャラクターはありますか?」
前田:「超人バロム1! っと言いたいところですけど、実は『変身忍者・嵐』を演じてみたいですね」
高野:「むむ……、バロム1よりも嵐ですか。どうしてですか?」
前田:「僕は四国出身で、当時『バロム1』は僕の住んでいたエリアでは放映されていなかったんですよ。
    それで、よく見ていたのが『仮面ライダー』と『変身忍者・嵐』だったんです」
高野:「なるほど」
前田:「キャラクターの造形、設定もカッコイイと思いますね」
高野:「あはは。前田さん自身も特撮ヒーローマニアですか?」
前田:「いや、マニアとは違うんですが、演じてみたい役柄として造形、忍者という設定に惹かれます」
高野:「役柄としてのキャラクター造形、設定ですか。う〜ん、僕だったら……」
前田:「高野さんはキャラクターの面を着ける必要ないじゃないですか(笑)あ、怪人体キリエロイド!」

高野:「あはは、ウルトラシリーズではウルトラセブンのペロリンガ星人とか、ティガのキリエロイドとか悪役が
    多いんですよ。帰ってきたウルトラマンだけは、主人公の団次郎の友人役でしたけど。
    正義のエージェント、バロム1が、おとなになったらなんと、ティガと人間を脅かす最凶の存在(笑)」
前田:「高野さん、今度ぜひ共演してくださいよ」
高野:「え? 僕をロスまで呼んでくれるんですか?」
前田:「え? 来てくれるんですか?」
二人: 大爆笑
対談裏話
対談後、前田氏と一緒に『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のオープニングロケ地、都庁前記念撮影。
衆目を忘れて、突然立ち回りまで演じてしまった二人。
キリエロイド高野 VS USタイムレッド前田の貴重なショットになりました。
後日談
2003年に帰国された前田浩さんは、2004年、アクションスクール「O.S Factory」を開講、後進育成に力を注ぐと共に、2005年11月の『仮面ライダーThe First』にて、「真のライダーアクション」を演じられる唯一のアクションマンとして出演されています。
Photo and Text by Yasu Kondo

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